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「私立大学等の収容定員の増加から見る」申請方法と考え方

先日、文部科学省のHPに「私立大学等の収容定員の増加に係る学則変更認可の諮問について」が掲載されました。

平成26年3月末申請の収容定員の増加に係る学則変更認可の諮問について:文部科学省

18歳人口が減っていく中、大学が質のみならず拡大をするということに賛否があるかと思います。しかし、ここでは収容定員の増加の是非ではなく、収容定員の増加に関連する申請と、どうやって収容定員増加を考えるかといういくつかのポイントを考えていきいます。

 

さて、その前に学則変更予定とありますので、「学則」とはをきちんと理解しておく必要があります。学則は学校の在籍者の修学上必要な事項を定めた規則を指します。記載しなければならない項目は、学校教育法施行規則第4条第1項に定められており、その一つとして「収容定員及び職員組織に関する事項」が書かれております。

また学則は大学の上位規定のため、学則をもとに様々な規定等が存在します。また学則を変更する場合は、学校教育法施行規則第5条により、申請又は届出をすることとされています。

つまり、「学則は大学が勝手にどんどん変えていいものではなく、申請又は届出をしているため、国も内容を把握している」という事です。

 

Ⅰ・大学の収容定員増の申請について

収容定員増は、学則の届出だけではなく、大学設置・学校法人審議会の審査が必要となります。収容定員増の申請は、3月末と6月末に行われ、審査は4月および7月、結果は6月及び8月となっています。

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この申請には、基本計画書・(校地ごとの状況)・(教員勤務状況)・校地校舎図面・学則・意思決定書・設置趣旨・名簿(学長)・(通信方法説明書)が必要です。()内は条件による。

基本計画書や設置の趣旨にどのような事を記載する必要があるかは、文部科学省のHPをご参照下さい。

http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/ninka/shinsei.htm

また文部科学省の大学設置室のHPに過去の申請書がありますので、参考になります。

http://www.dsecchi.mext.go.jp/

さて、収容定員に係る学則の変更の場合は、「学則の変更の趣旨等を記載した書類」の作成が必要です。内容は下記の3つの項目となります。

a.学則変更の内容、b.学則(収容定員)変更の必要性、c.学則変更に伴う教育課程等の変更内容

留意点として、収容定員変更の背景や今後の見通し、客観的なデータ(DP等が社会の要請を踏まえているか、学生確保はできるか、卒業後の進路と受け入れる側の需要)が求められます。

特に客観的なデータが非常に大変かと思いますが、根拠がないと定員増は認めないよという方針です。(先日の大学設置等に関する説明会では、何をもってデータをするのかっといった質問がされていました。)

 

Ⅱ.どこを収容定員増とするか(考え方の一例)

今回は経営的に考えた場合、このように考えられるかなとまとめてみました。(教育的配慮は今回は考えていません。学生へきめ細かい教育や双方授業の実施などは、このような考えとは反対であると思っています)言うまでもなく、収容定員増は人が集まっている学科が前提です。

 

①教員数からどこを増やせるか

大学の使っているお金でかなりの割合を占めているのは、人件費です。また専任教員数は大学設置基準第13条・別表第一により定められています。

例えば文学関係のA学科とした場合、1学科で組織する場合は収容定員「320-600名」は専任教員数は10名、2学科以上で組織する場合は収容定員「200-400名」で専任教員数は6名が必要です。(この定員数を超える場合は、収容定員400人につき専任教員が3名必要)

よって、A学科を1学科で組織した場合、600名までは教員数が同じであるので、言うまでもなく収容定員が320名より600名であれば収支が多くでます。(このほかに別表第二により、大学全体の収容定員に応じ定める専任教員数も必要ですが、ここでは取り上げません)

 

さてこの計算をしていくと、ある一定の収容定員を超えると専任教員を増やすラインというのが存在します。(学部の種類、学部学科の構成により異なるので、どこがラインかは、今回の表では分かりませんが、微妙な増やし方をしている大学はそういうラインもみて計算しているところがあるのかなと思います。詳細はその学部の分野などを見て計算する必要がありますが、学際分野の学部があると計算はちょっと難解になります。)

 

②資格の養成課程からどこまで増やせるか

また資格取得をする学部、例えば保育士養成は1クラスの人数に制限があります。1クラス50人の制限であれば、25人を増やすと2クラスとなるので、それなら100人にしたほうがいいという考えがあります。(上記の教員数と併せて、考える必要がある)

 

③その他

校地面積(学生数)や校舎面積(学部の種類と収容定員)で大学設置基準により定められていますの。これはどちらかいうと考えより必要条件でしょうか。

 

今回は経営的視点が強い内容ですので、教員からは、「そんな事をしたら学生の教育の質が下がる」と言われると思います。ただ今回申請した大学は、量の拡大という道も選んで将来どういう方向で行くかを模索しているのでしょう。(新しく学部学科を設置する申請業務は非常に大変ですし、一度収容定員を獲得しておくというのも、分からなくもありません)ただ、書類を出している以上、学生が集まるという前提ですので、今後どのような募集状況になったのか等の情報公開等も見ていく必要があります。