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参加録 大学評価コンソーシアム「平成26年度IR実務担当者連絡会」

本日開催された大学評価コンソーシアム「平成26年度IR実務担当者連絡会」に参加してきました。大学や高等教育に関するシンポジウムでは、IRの発表があることはありますが、IRのみをテーマとした実務者向けのこのような会は私が知る限り、あまりないかと思います。参加者はIR担当の教職員30名程だったと思います。

さて、この連絡会の趣旨としては下記のように説明されておりました。(一部要約)
・IRオフィスが各大学で設置が進められているが、何から始めていいか分からないことの指摘がある。そこでIRの技法・手法や実施体制などの共有の場として開催する。

連絡会では4つの報告とともに活発な質疑が行われており、報告の詳細は下記となります。
なお、IRというテーマであり、調査・分析結果も報告されておりますが、ここだけの話というのもありましたので本ブログでの紹介は避け、私が気になった点のみとさせていただきます。

1.新潟大学企画戦略本部評価センター(IR推進室兼務)関先生
オレゴン大学IRオフィス訪問記」
・昨年にIR推進室を設置。国内の事例収集とともにアメリカのIRの事例を見る為にオレゴン大学に視察。
オレゴン大学は4年生の州立総合大学(学生は約25000人、教員は2000人ほど)
・IRオフィスの目的(抜粋)高品質のデータ、情報、分析を提供。IRとアセスメントに関わるデータを提供。アセスメントの分析結果を提供など。
・IRオフィスの機能として、各組織とデータ分析を行う。意思決定支援のデータ分析。大学のトップと直接IRオフィスがつながっているわけではない。
・学内での位置づけとして、データの司令塔、データのレポーティングシステム(各セクションと連携をしてレポートを作成する)、データ分析のエキスパート。ただしデータ収集やデータベース管理は行わない。
・規模として、5人(教員ではない)各自の学問的専門性と業務の専門性を備えている。
・IRオフィスの中核業務 計画立案と分析、教職員や学生に係わる調査研究
・他のオフィスとも連携してデータ分析を行うこともある。
・データ分析は、IRオフィスの全スタッフで議論している。
・各セクションが使っているデータベースへのアクセス権限は持っている。(←直性データベースにアクセスできる)

2.京都光華女子大学 EM・IR部 橋本氏
「質を伴った学修時間の増加・確保に向けた調査分析手法・実施体制」
・学修時間や態度、入学者のアンケート、退学要因、国家試験合格率などの分析を行っている。
・教育の質保証→質を伴った学修時間を増加・確保する(組織として行う)
・EMの為のIR 各部署の共通の言葉としてデータを使用する。
・教員が想定する学修時間の実態と学生の実際の学修時間はどうなのか?
   →教員が求めている学修時間について、実際に学生はどうなのか?
   →例えば授業アンケート結果を活用してみる。
・学修時間と学修意欲についての関係をみてみる。
  →学生調査の結果データを活用。
・学修時間と成績(累積GPA)についての関係をみてみる。
・データ結合はSPSSを使用、作図はエクセル。

3.愛知教育大学 相原先生
「新入生学習調査の使い方 入学時の調査データで学業成績(GPA)を予測する」
・新入生学習調査を、JCIRPの学習行動に特化した簡易版を作成し実施している。
・4大学共同で実施している→ベンチマークによる比較ができる。
・GPAは、入学前の情報との相関は低い。
・クロス表から、合成変数危機度を作成し、危機度からGPAを予測する。
  →まずは様々な変数とGPAを組み合わせてみる。
・今後は入学時の調査データを蓄積して信頼性と妥当性を高めることが必要。

4.名城大学学術研究支援センター/総合研究所 難波氏
「IRことはじめ ー多読プロジェクトでの萌芽的取り組みとその後」
・発表は5年前の萌芽的取り組みについて発表。
名城大学では、教育の充実の一つとして英語多読学習法の開発を行っている。
・多読専用図書にコードをつけ、学生が何を読んだかのログを収集。
・事務でできることは何があるのか?例えば、どのレベルの本が必要なのかを学生が利用したデータを用いて、データ収集や分析を実施。

分析の事例報告については、比較的取り組みやすい事例が紹介されていたように思います。IRをどのように展開していくかという議論になると、国公私立や規模などからでも議論が違いますが、今回の連絡会のようなIR担当者に共通として事例等を共有できる場というのは非常に貴重な場でした。

最後に本連絡会に参加して思ったのは、IRは教職協働として進めやすい分野だと考えていますが、教員だからここまでできるとか、職員だからここまでできるという線引きをしているケースが少なくないのではということです。今、文科省で議論が進んでいる専門職の論点もあるのでしょうが、職員だからここまでしかできないとかではなく、職員としての強みを活かしてどのようにIRに取り組むか、大学が立てたIRのヴィジョンにどのように達成できるかを考える必要があり、限界を決めるのではなく、調査や統計学を学ぶなど努力をする必要があると思います(自戒を込めて)