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平成27年度大学教育再生加速プログラム 公募要領から見るハードルの高さ

次年度の大学教育再生加速プログラムの公募要領が、日本学術振興会のホームページに掲載されました。本日、説明会が開催されていますが、公募要領から気になった点をいくつか抜き出してみました。

  (弊ブログでも、大学教育再生加速プログラムについて、取り上げたことがあります。このプログラムの目的も過去記事で紹介していますので、そちらをご参照下さい。)

 

www.daigaku23.com

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平成26年度の大学教育再生加速プログラム(以下「AP」)は、テーマが3つあり、テーマⅠ「アクティブラーニング」、テーマⅡ学修成果の可視化、テーマⅢ「入試改革・高大接続」でした。平成27年度は、これらの3つのテーマの募集は行わず、テーマⅣ「長期学外学修プログラム(ギャップイヤー)」のみの募集となります。

テーマだけを見ると、「これならやってる!」という大学もあるかもしれませんが、実は申請条件等を見るとハードルがかなり高いものです。そこで今回は、申請条件やプログラムについて気になった点を挙げていきます。まず、APは1学部だけの申請でも可能ですが、事業期間終了後は大学全体で取り組まなければならない事は押さえておかないといけません。そして、大学改革に取り組んでいる(あるいはAP期間中に取り組む)必要があり、申請要件が定められています。

 

さて、この大学改革の申請要件として気になるものをいくつか挙げてみます。()内は、個人のコメントです。

・3つのポリシーの策定とHPでの好評、カリキュラム編成にポリシーを反映していること(→好き勝手にカリキュラムをいじれるのではなく、体系的にカリキュラムを組みなさいという事でしょうか)

・キャップ制の採用(履修上限が適切に設定されているかですが、適切とは何かは各大学で考える必要があります。ただ年間50単位は厳しいかと考えています)

・教育技術向上や認識共有のFDの実施で、各年度で全専任教員の四分の三以上が参加していること(平成26年度は二分の一でした。しかし、FDは大学設置基準で義務化されており、全員が取り組まなければいけないものです←このへんは申請の上で押さえておくべきとこかと

・ 設置計画履行状況等調査の対象となっている大学において「是正意見」付さされている場合は当該意が付されていない状況となっていること(これは、新しい条件ですね。該当大学はそんなに多くはないです)

 

それでは、プログラムの概要から気になった点ですが、まずはギャップイヤーとは今回はどのように定義しているのかを確認する必要があります。公募要領P2にある定義は「入学前の他、在学中、就職前など多様な時期に、一定期間、留学やインターンシップ等の体験活動を行う仕組み」とされています。

 

○長期学外学修プログラム(ギャップイヤープログラム)について

 まずは長期学外学修プログラムについてです。1月行われた説明会では次のような事が説明されました。

・本プログラムは、希望者のみでもいいが、参加人数が多くなるように工夫や配慮が必要。

・学事暦の多様化におけるギャップイヤーは入学直後のできるだけ早い時期を想定。
 (現在の学事暦で夏季休暇に学外学修プログラム実施は、APに該当しない)

・各カリキュラムの体系性の中に位置づけられるプログラムである必要があり、単位認定することが想定される。(単純なインターンシップではプログラムとして認められないということですかね)

また公募要領では、上記以外の説明として

・1ヶ月以上のまとまった期間であって、教育的効果の高い期間であること 

・留学やインターンシップ、ボランティア、フィールドワークなど活動の多様性

・学生が自ら活動先を開拓、活動内容を企画するなど、学生の主体性を重視したものであること

活動資金はアルバイト等で調達し、一部を外部資金等により支援するマッチング方式を取り入れること、教育的観点を含むものであること

・事前事後指導が効果的なものであること

・運営体制について、緊密な連絡体制の構築

 個人としては、従来のイメージを捨てきれないため、非常によく分からない(寧ろ理解できないが適切)というのが感想です。学生が自分で活動先を見つけて、資金も自分で稼いで、プログラムに参加する必要がある。大学は、カリキュラムの体系性に沿ったプログラム先と連絡を取り、事前事後指導を行う。これは学生の事前事後指導が重要になります。学生自身が大学のカリキュラムに沿ったプログラムを構築する、それも1年生!は非常にハードルが高いことだと思うのですが…。(おそらく資金については、補助金は学生の奨学金には使用できないので、このように書いてあるかと推察されます)

 

○学事暦の多様化について

 最近では4学期制の導入のニュースが出ております。そして、APも学事暦の多様化を行う事が条件となっています。

 ただ単に3学期制や4学期制をとればいいというわけではありません。例えば4学期制を導入して、ギャップイヤープログラム(1年次の1学期に参加)に参加した学生と参加していない学生がいるとします。

ちょっと分かりにくいので図にしてみました。4学期制の大学で、ギャップイヤープログラムを、1年次のいずれかの学期に参加しなければならないと仮定します。

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○○概論は、1年次が取得しなければならない科目ですが、ギャップイヤーによって、このケースだと1学期と2学期に開講しなければなりません。特に、ここ数年開設した科目は、設置届出の際にカリキュラムの体系性や順次性をふまえてカリキュラムを編成していることや履修モデルの提示などがある為、○○概論に限らず、他の科目も複数の学期で開講する必要があります。(極論ですが、どの学期でも学生が入学して大丈夫なように全ての科目を全学期開講しておく必要があるかもしれません)

 →1つの科目を複数の学期に渡って開講する必要がある。(教育コストが非常に高くなるので、経営側からはカリキュラムのスリム化を求められる)

 →履修モデルを、それぞれのタイプごとに作成をする必要がある。

 

昔は、補助金は備品を購入したり、貰いっぱなしという事も少なくなかったようですが、今は大学がその方向性に行くと決定し、大学も資源(人、金など)を投入する必要があります。職員としては、学内のどこにどのような資源があって、それをどのように活用するかは腕の見せ所ではないのかなと考えています。

むしろ、APに採択されることによって、学長は自学がどのように進むかを明確に示すことができるものと捉えたほうが良いのかもしれません。