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大学アドミニストレーターを目指す大学職員のブログ

高等教育関連の話題が中心。最近は補助金やIR、SDの話題が中心です

大学職員として考えるファシリティマネジメント

学部等の設置やカリキュラム再編などで、よく聞くのは教務課から「教室が足りない」と言った言葉です。しかし実際に時間割や施設の管理システム等から教室の使用率を調べてみると全体では使用率は50%前後の事がありました。

正確には「教室が足りない」のではなく、「授業が2時限から4時限に集中するから空き教室が足りない」「ゼミや演習を行う机を自由に動かせる教室が足りない」といった事でした。

さてそのような事もふまえ最近気になっているのは、標記にもあるようにファシリティマネジメントという概念です。
<参考>社団法人日本ファシリティマネジメント協会

ファシリティとは次の事を指します。
土地や建物、ワークプレイスや環境、設備や家具・家電、ICTやサイン、ユーティリティ(電気、ガスなど)
またファシリティマネジメントとは次のように定義されるそうです。
企業、団体等が保有又は使用する全施設資産及びそれらの利用環境を経営戦略的視点から総合的かつ統括的に企画、管理、活用する経営活動
単に施設の維持管理ではなく、経営活動として考えているには非常に興味深い点です。
私自身は施設管理や管財は業務として担当しておりませんが、大学職員として該当の部署のみならず、教学でもファシリティマネジメントは必要な視点であると考えています。

本記事では、ファシリティマネジメントをふまえ、公益社団法人日本ファシリティマネジメントが発行している「第四の経営基盤 日本企業が見過ごしてきたファシリティマネジメント」の第3章「ビジネスを支えるFM(ファシリティマネジメント)6つの視点から、管財担当でなくとも考えておくべきファシリティマネジメントについて考えてみます。

第四の経営基盤―日本企業が見過ごしてきたファシリティマネジメント

第四の経営基盤―日本企業が見過ごしてきたファシリティマネジメント

  • 作者: 松岡利昌松成和夫酒井修成田一郎似内志朗
  • 出版社/メーカー: 日本ファシリティマネジメント協会
  • 発売日: 2013/05
  • メディア: 単行本
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この本で紹介されている経営組織が直面している課題=ビジネスを支えるために、6つの視点を取り上げています。
①変化に対応する、②成長を支援する、③収益性を高める、④人との場を活かす、⑤社会に貢献する、⑥安心・安全を確保する
これら6つをそれぞれ大学職員としてどのように考えられるでしょうか。

①変化に対応する
  大学の変化はたくさんありますが、例えば学部学科の改廃による内部の変化、18才人口の2018年度問題、教育方法の変化などが挙げられます。
  学部学科改変は、求められる施設も違います。また昔の大規模講義から、少人数の授業やアクティブラーニングの実施など求められる教室や設備も変化しています。(教室はアクティブラーニングがやりやすように固定式ではなく移動式がいいという声も多々聞きます)これらの変化は唐突に起こったものではなく、あらかじめ想定されるものや中長期計画に基づいたものが多いと考えます。これらの施策を常にチェックし、どのように具体化できる事を考える必要があります。また教育環境は、教員や学生の声、学習科学の観点からも考える必要があります。

②成長を支援する
  ここでいう成長は、企業や団体の成長を指していますが、大学ではどうでしょうか。大学の成長は学部学科の新規設置や収容定員の増加(近年はこのあたりは簡単にはできなくなっています)といった量的なものから、大学のブランドや学生をディプロマポリシーにそって学位を授与しているかなど質的なものも考えられます。また教育や研究といった観点からも考えられるでしょう。
例えば学生の教育であれば①とも密接しますが、学内の教室も含めたキャンパスデザインをどうしたらよいかを考えたり、研究であれば研究を支援や奨励する視点から考える必要があります。

③収益性を高める
  大学も収支が出ますし、赤字では学校法人は運営することはできず、新しく建物を建てることができません。そのためにファシリティマネジメントでは、例えば財産を取得するかリースするかも重要な選択です。機材でもリースができるものがありますし、例えば学生寮を国際交流や地方から学生を集める観点からだと近隣のアパート等を借り上げるなども想定できます。
金沢工業大学は、借り上げではないですが、このへんは面白い事例を持っていました)

 ④人と場を活かす
  今度は学生ではなく、事務組織に目を向けてみます。事務組織でよく聞く話は、旧態依然で縦割りが解消されないとか、部署名や場所に振り回されるといった事があります。働く場所(ワークスペース)を変化させるだけでも、改善の効果はあるかと思いますが、書類が山ほどある部署では日によって働く場所が異なるというワークスペースはまだまだ難しいですね。(私自身も仕事をする上で大量の参考文献や書籍があるので、それを整理しないといけません)

⑤社会への貢献
  大学ではファシリティマネジメントの観点から考えると、地域の防災の拠点や環境、地域へ開かれたキャンパス作りも考えられます。地域に開かれたキャンパスは防犯面からも課題は多いと思います。また防災拠点としては、耐震性の建物や非常食などの備蓄も考えなければなりません(驚いたことに、3.11の震災のさいに、食料の備蓄がほとんどない大学もあったと聞きました)

⑥安心・安全の確保
 ⑤とも関連があるかと思いますが、セキュリテイやどのように修繕を行うかが考えられます。また学生や教職員が安心して教育研究やその支援ができる建物の維持管理などがあるのではないでしょうか

私自身、まだ整理できているわけではありませんが、単に経営、教育のどちら側からではなく両方の面からファシリティマネジメントについて考える必要があると考えています。

その為には、推進する組織や人材が必要ですが、これらを一人の人間が担当するには、経営だけでなく財務・管財・高等教育政策・学習科学など様々なことに通じている必要があると思います。なかなかそのような人はいませんが、管財という仕事だけではなくこのような考えを取り入れることにより、大学んの専門職にもなりうる分野であるのではないでしょうか。

最後に、様々な大学に行くとキャンパスが見た目だけでなく機能からも素晴らしい大学があります。お話を伺うと、近年ではなく昔からキャンパスデザインを考えて、実現してきたとの事です。職員は中長期経営計画にも目を通す機会が多いですし、立案する事も少なくありません。若手でもこのような事をふまえ、学内の整備を行うと大学の教育研究は変わると思います。