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大学評価コンソーシアム 大学担当者集会2015 参加記録

神戸大学で8月27ー28日に開催された大学評価コンソーシアム担当者集会に参加してきました。(正確には、投稿時は参加中です)

この担当者集会は今年で9回目の開催との事です。
 
今年は1日目は全体会が行われ、2日目はワークショップが中心の分科会が開催される予定です。
 
今回は1日目の全体会の要点のメモをまとめました。(分科会は、ワークショップが中心で各大学のここだけの話が多い事が予測されるので、初日の全体会のみブログにアップします。
 
また今回の大学評価コンソーシアム担当者集会の参加者は100名ちょっともであり、参加者の80%が職員との事です。また70%は国立大学、5%は公立大学、19%は私立大学から参加との事です。
 
それでは全体会のメモとなります。(筆者の解釈により、多少文言を変えておりますがご了承下さい)
 
Ⅰ.大学評価とIRのこれまでとこれから
  九州大学 小湊卓夫先生、茨城大学 嶌田敏行先生
①小湊先生
・平成16年度からの認証評価と、国立大学は法人評価(これから3サイクル目)が課せられている。
大学評価とIRは言葉は違うが、重なる部分は多くある。
   ⅰ.評価は大学の諸活動の現状を捉えて質保証や活動の向上を目指す
   ⅱ.IRは必要なデータを収集して、大学の意思決定を支援する活動
・評価とIRの活動の共通点として、①諸活動の現状把握や課題抽出、②定量的・定性的なデータを取り扱う、③学内の各部署やデータベースから情報を収集する等が挙げられる(データを価値あるものにするのも共通点の一つである)
・コンソーシアムでは、評価業務の3つのガイドラインを作成してホームページ上で公開している。
②嶌田先生
・評価やIR担当人材に求められる観点・能力を整理しており、今後体系的な人材育成プログラムの展開が必要。
・コンソーシアムでは、会員に対して評価・IR人材の観点・能力についての実態調査を実施した。調査は観点・能力のルーブリックを提示し、自身のレベルを回答するものである。なお、ルーブリックは設計・収集・分析・活用の4要素で作成している。
   ⅰ.回答者は職員は経験年数が浅い人が多く、教員は経験年数が長い人が多い。教員は自身が中級や上級と回答している人が多い。
   ⅱ.収集や分析は中級が多い傾向にある。
   ⅲ.数量データ分析は、経験年数を重ねても中級には上がりにくい。
   ⅳ.要素によっては、3年ぐらいで1人前になるものと、5年かかるものがある?
 
Ⅱ.大学評価に活かす米国IRの知見
  山形大学 浅野茂先生、福岡大学 佐藤仁先生、九州大学 小湊卓夫先生
①浅野先生「IRの4つの顔」
・米国のIRには4つの顔があるとされている。①情報精通者、②政策分析者、③スピンドクター、④学者・研究者としてがある。最近では、知識経営者としてのIRも加わっている。
   ※4つの顔は、表で一覧として理解したほうが分かりやすいです。例えばアメリカのIRの職能団体AIRから発刊されているIRの初任者向けの本やIRハンドブックが詳しく解説されていますし、日本語の文献でも紹介されているものがあります。
  ⅰ.情報精通者はデータを一元的に対応する。
  ⅱ.政策分析者は組織の現状や政策分析を行い、執行部に俯瞰的な視点を持てるよう支援する。
  ⅲ.スピンドクターは、データ解釈を時と場合によって使い分けて議論を導く
  ⅳ.真実を追求する学者研究者としての観点をもつ
 
・4つの顔から出てきた参加者からの課題の例(ワークで実施した結果をもとに出た例)
   ⅰ.学内でのデータ収集が難しいという課題
   ⅱ.有効な指標の開発が難しい
 
②佐藤先生「IRの3つの知性について
・IRの文献でよく紹介される3つのインテリジェンスとは、IRを担当するに必要な知識についての事である。
・1つ目は、専門的・分析的な知性(ただし、これたは基本的な要素だが、これだけでは何の役に立たない)
  ⅰ.専門的知性は、情報の構造・データ定義・集計方法など
  ⅱ.分析的な知性は、統計や研究デザインなど
・2つ目は問題に関する知性(大学を超えて(異動)利用可能な要素。ただし1つ目があること)
  ⅰ.問題に関する知性とは、戦略的計画、予算配分、組織構造など、中間管理職以上が直面する課題や大学がどう動いているかに関する理解
・3つ目は、文脈に関する知性(3つの知性のトップに位置する、IRが信頼を勝ち取るために必要)
  ⅰ.大学の文脈や政府の動向などの一般的な文脈や、誰がキープレーヤーなのかや価値観などの特定の大学をめぐる文脈がある。
・アメリカではIRは専門職であるため、必要な知識の階層化が可能であり、体系的に身をつけられる。
・日本の大学では人事異動がある。評価・IR担当の前に何をやってきたかによって、3つの知性のバランスが異なるはずである。よって、バランスが分かれば、IRの組織の弱さを理解しどこを強化すべきか分かる。(日本は階層ではなく、バランスではないのか)
 
③小湊先生 「情報支援サークル;組織学習のプロセス」
・データから情報へ(学内の事実は分離されたデータで各部署に偏在する。そこから特定の文脈で構造化される時に情報が変換される(意味のあるデータにする)
情報を生み出す事は、組織に価値を付与することである。
データが情報に変わると、集団で蓄積されて学習が継続される(組織学習)
・IR担当者はデータを情報に変換する。
・情報支援サークルに示される5つの機能にIRに担当は担う必要がある。①設計、②収集、③分析、④活用(報告)(生成・配布・報告)、⑤活用(報告)(影響・意思決定)
※情報支援サークルは、リチャード・D・ハワード編(2012)『IR実践ハンドブック;大学の意思決定支援』玉川大学出版部を参照。
 
数時間の全体会でしたが、講演のみではなくワークショップを組み合わせながら、自己や自大学を振り返り、現状を把握できる会でした。
 
全体会の内容は、日本のIRに関する文献でも目にする内容もありますが、記事中でも紹介した本を読んでいただくと理解が深まるかと思います。