大学アドミニストレーターを目指す大学職員のブログ

高等教育関連の話題が中心。最近は補助金やIR、SDの話題が中心です

コラム 大学教育改革はいくらかかるのか~私立大学等改革総合支援事業タイプ1「大学教育の質向上」を試算~

  昨年度は10月中旬に発表された私立大学等改革総合支援事業の選定結果ですが、今年度もそろそろ出る時期かと思われます。

 

 この事業に選定されることによって、私立大学は一般補助の「教員経費」や「学生経費」の一定割合の加算や、特別補助の増額があります。

(昨年度より増額となるかどうかは補助金の額が確定するまで分かりません。なお、参考として次のような事を調べたことがあります)

as-daigaku23.hateblo.jp

 今回は、 私立大学等改革総合支援事業タイプ1「大学教育の質向上」の得点を取る為にどれぐらい費用がかかるのだろうと試算してみました。(単なる妄想とも言います)

 なお、想定は小規模大学で次のようにしてみます。

  ①1学部1学科

  ②入学定員400名、収容定員1,600名

  ③タイプ1の申請は初めてであり、今年度の前期にいくつかの取組みを実施する、なお、ノウハウ等ない為、外注等も検討し実施する。

  ※最後に、お金がかかりそうというのは著者の独断と偏見です。試算ですので今までやっていた事、方法や工夫、大学の規模などでまったく異なります。

 

それではいくつかの費用がかかる項目をあげて、試算してみましょう。

①大学内にIRを担当する部署を置き、専任教員又は専任職員を置いているか?

IR担当者を新たに雇うか、学内の誰かを任命するかといった事が考えられますが、本事業のQ&Aに、IR室と教務課との配置と併任に関する事項があり、IR室に係る業務が50%以上であることとされております。

 例えば若手職員(年収400万)の業務割合を60%としてみますと、240万円として試算してみます。

(大学によっては、新たにIR担当者として雇われた大学も少なからずあると聞いています。また社会保険とか考えると大学・学校法人としてかかる費用はもっと多いですね。そもそもIR担当者の仕事は、従来のIRと考えられる仕事を集約するのか、新規性があるものなのか等大学の方針・考えによっても異なる事かと思います。)

 

②学生の学修時間の実態や学修行動の把握を行っているか?

 例えばアンケート調査などが想定されますが、学修行動調査を0ベースから作成するのは大変です。IRコンソーシアムなどを活用することも考えられますが、年会費等や調査・集計にかかる費用は発生します。

 今回は、改革総合支援事業で必要な調査項目をシンプルに紙面にてA4で2頁ほどのアンケートを行う。複数の学年(1年と3年)に計800名に実施するとします。紙代は微々たるものですので今回は含めないものとし、調査用紙の打ち込み作業を外部委託することとします。今までの業務でアンケートの打ち込み作業をしてもらう際の金額を参考として、アンケート1枚(2頁)で25円とします。アンケート回収率75%として、600人×25円=15,000円

※自分達で打ち込み作業を処理すればいいのではという話もあるかと思いますが、私自身はある程度の枚数があれば外部委託をしています。2人でそれぞれ打ち込んで、間違いがないかチェックするなどもしてくれていますし、慣れている方・専用の機材を持っている方はすぐ終わる為です)

※大学IRコンソーシアムの年会費は30万となります。小規模大学の場合は負担としてはかなりありますが、学生調査を他大学と共通して実施できること、分析の為のシステムが使用できる事を考え、この補助金を取る為ではなく、質保証や認証評価などの観点からであれば高くはないかもしれません。

大学IRコンソーシアム

 

③教員の評価制度について

 優れた教員への顕彰等を昇任や昇給等に反映しているかといった内容ですが、評価された教員に対し、昇任とそれに伴う給料の増加としてみます。大学の規定によって異なりますが、月1万の昇給であれば(賞与を4ヶ月として)1万×16ヶ月=16万と試算します。

 

④学修成果の把握と単位認定、学位授与、卒業判定とは別に行っているか

 例えば外部の標準化されたテストや、学修行動調査、ルーブリックの活用、ポートフォリオの活用があげられています。外部の標準化されたテストはいくつか思い浮かびますが、学生一人あたり数千円かかるものもあります。ディプロマポリシーのルーブリックをつくり、学生にやってもらうという方法もありますが、ルーブリック開発には大変な労力と時間がかかります。(AAC&Uのバリュールーブリック開発も大変なコストがかかっているとある講演でお聞きしました)

<参考>AAC&U バリュールーブリック

https://www.aacu.org/value/rubrics

 今回は外部のアセスメントテスト@2,000円を採用してみましょう。全学部かつ複数学年に実施する事が必要ですので、1年次と3年次に実施とし、実施率75%と仮定します。よって600名×2,000円=120万円となります。

※外部のアセスメント結果の利点として、他大学との比較もできるという事が挙げられると思います。自学の強み弱みが把握できるという面でしょうか。

 

⑤学内の教育改革に取組む教員や組織を財政的に支援する予算があるか?

 大学によっては学内GPなどといった制度があると聞いたことがあります。学内の競争的資金と言い換えて良いと重い増すが、ここでは年間300万の予算措置を行ったと仮定します。

 

 気になったもの5つを挙げてみました。合計で677,5万円です。仮定に仮定を重ねた話ですが、大学教育改革はお金がかかる事が多い事は否定できません。お金がかからないように、内部で全てをやろうとしても、その分の人件費はかかっています。特に新しい調査やルーブリックの開発などは、労力がかかる事かと思います。

 大学職員は教育効果の視点と経営的な視点のそれぞれが必要かと思います。言い換えれば、費用対効果はあるのかを常に問いながら業務をする必要があるのではないでしょうか?

 またこの記事だけ見て、「損しかしないのでは?」と思うのではなく、大学としての方向性や内部質保証・認証評価などの観点も職員は持ち、判断していくことが今後求められていくと思います。