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大学ポートレート(私学版)から見る学修についての評価②~職員が知っておくべきルーブリックの活用~

 近年、教育の質保証が言われ、単位の実質化に伴う学生の学習時間の増加が言われています。それと同時に、取組まれていることとして学習成果の可視化があります。言わば、勉強時間という量だけではなく、質をどう可視化するかでしょうか。

 

 その教育の可視化の一つのツールとして、「ルーブリック」があります。COCやAPといった補助金事業やFDに関わっている職員にとっては馴染みのある言葉かもしれませんが、ある一定年齢以上の職員(社会人)は、学生時代にルーブリックなどはなかったので知らない人も多いでしょう。

 

 さてルーブリックの定義ですが、文部科学省の質的転換答申の用語集には、次のように説明がされています。

新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~(答申):文部科学省

米国で開発された学修評価の基準の作成方法であり、評価水準である「尺度」と、尺度を満たした場合の「特徴の記述」で構成される。記述により達成水準等が明確化されることにより、の手段では困難な、パフォーマンス等の定性的な評価に向くとされ、評価者・被評価者の認識の共有、複数の評価者による評価の標準化等のメリットがある。コースや授業科目、課題(レポート)などの単位で設定することができる。国内においても、個別の授業科目における成績評価等で活用されているが、それに留まらず組織や機関のパフォーマンスを評価する手段とすることもでき、米国AAC&U(Association of American Colleges & Universities)では複数機関間で共通に活用することが可能な指標の開発が進められている

AAC&Uのルーブリックは、バリュールーブリックの事です。バリュールーブリックについては、調べてもらうと内容等について紹介している論文が出てくるかと思います。

<参考>AAC&U value-rubrics

https://www.aacu.org/value-rubrics

 ただ説明だけでは分かりにくいので、日本高等教育開発協会のルーブリックバンクからルーブリックを見てみるとイメージがつきやすいかと思います。

<参考>日本高等教育開発協会 ルーブリックバンク

JAED ルーブリックバンク

 

 ではルーブリックはどのように使われているのでしょうか。本記事のタイトル通り、各大学がルーブリックの活用について大学ポートレートに載せていますので、(私学のみですが)、気になったものを一覧にしてみました。なお、大学ポートレートの大学としてのルーブリックの欄には、運用以外にも評価等について記載している大学も数多くありますが、今回は運用方法のみの紹介します。

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 大学ポートレートを見ていると、科目レベルだけではなく、教育課程や単に知識を問うものではない学外での学びにも多用されておりました。特に興味深いのは、東北福祉大学のコモン・ルーブリック、駒澤大学の社会人基礎力のルーブリック、東京理科大学のICTとルーブリックです。

 関西国際大学のルーブリックの使用方法も授業レベルでの使用方法例として分かりやすいですね。(個人的には、大阪成蹊大学のデッサングレードや色彩表現のルーブリックの記載内容が気になります)

 

 さて、職員として何をここから考えるのかですが、ルーブリック中身そのものはタッチしない事が多いと思います。しかし運用の観点からで言えば、例えば東京理科大学のICTとルーブリックについては、職員も関係ある例かと思います。(ルーブリックとはどのようなものか、どのほうな使い方をするのかを理解しておかないとシステムの詳細ができないでしょう。)

 

 また駒澤大学の社会人基礎力のルーブリックは、定期的に学生が活用(ルーブリックにチェック)する場合、ルーブリックを時系列で比較することで自分は何の社会人基礎力が伸びたかが把握できます。その為にルーブリックをどのように保存するか(学生個々・アドバイザー教員・事務局、紙媒体でファイルに挟む・ポートフォリオ等にいれる?)が課題になり、予算面も含めて職員が関わる事があるかと推察されます。

 

 学習成果の可視化というと、学生の成果を可視化し客観的に評価するというイメージが強いかもしれません。しかし、学生の立場から考えると、教育の可視化は分かりやすい到達目標とその段階が分かりやすくなっているともいえます。

 

 例えば、授業でレポート課題を出すさいに、事前に評価の(ライティング等)ルーブリックを明示することにより、学生はどのレベルでレポートを書けば、どのような評価がもらえるかが分かります。またレポート返却時にルーブリックも一緒であれば、そのレポート評価の基準が分かります。(学生時代にレポートや試験が返却されて、何故その評価なのか意味が分からないといった経験ありませんでしたか?)

 

 職員だから教育は分からないとか知らないほうがいいという人はこれから求められないと思っております。内容は分からずとも概要だけは把握できるよう心がけなければならないと常に感じています。