大学アドミニストレーターを目指す大学職員のブログ

高等教育関連の話題が中心。最近は補助金やIR、SDの話題が中心です

参加録 学校法人セミナー「これからの大学教育・財政に関する重要なポイント 」

みずほ証券が主催する「みずほ証券・学校法人セミナー」に参加しました。
内容は東京大学小林雅之先生の「今後の教育費・奨学金制度の在り方について」と私学高等教育研究所の西井 泰彦先生の「少子化時代における私立大学の財政の在り方について」です。


講演内容については、個人的に重要・気になった点について記録しております。

小林先生『今後の教育費・奨学金制度の在り方について』
・教育格差の解消は、社会経済的格差の解消の前提条件となる。
・経済力による格差は政策で是正できる。
(教育力は時間をかけて格差ができるため、是正するには大変)

高等教育の格差
・日本の高等教育格差は地域間格差の是正はやってきた。(2002年度まで)
・他にも格差として、男女別・地域間・所得階層で高等教育の格差がある。
国公立大学では、2012年は所得階層で進学格差ができている(所得が高い比率が多い)
・2012年は成績が良くても、進学できるわけではない(家計が無理して進学させるということができなくなっている)
・小学校から全て私立だと、大学まで2,238万かかる。
・大学の授業料が年々上がっているが、所得は下がっている。

各国の教育費について
・教育費負担には3つの主義がある。
   ①公的負担(福祉国家主義)、②親負担(家族主義)、③本人負担(個人主義
OECDの調査によると、日本はチリに次いで家計負担が大きい。
・教育費負担について考える際は、授業料と奨学金を一緒に考える事が必要。

高授業料・高奨学金政策について
・定価授業料を高額に設定し、大学独自の奨学金でディスカウントする。
・ディスカウントは学生によって異なる。
・優秀な学生を獲得することができる。
・大学収入も増やすことができる政策である。
・課題として、公正か?、大学収入を本当に増やすことができるか?
・学生によって教育負担が変わる戦略である。

教育費負担の軽減について
・無理する家計は続かない。
・教育費負担軽減と少子化対策には大きな意味がある。
・具体的な方法として、学費無償、給付奨学金、授業料減免、貸与奨学金などがある。
・授業料減免は設置者別で大きく異なる。
・ローンの拡大だけでは対応として不十分。
   →所得連動型奨学金返還制度を審議中。

奨学金について
低所得者層ほど、返済の不安があり、借りたくないという回答が多い。
・所得連動型ローンは、回収率を上げるため、所得に応じて返済額を決定する。
   特徴として①所得に応じた返済、②一定所得以下での返済猶予、③一定期間あるいは年齢で帳消しルール。 ④利子補給、⑤源泉徴収や類似の方法で返済など
・オーストラリアの所得連動型ローンは、将来の所得に基づいて返済額がきまる(例えば、医学や会計学など、将来期待所得が高い専攻分野は返済額が高くなる)
・問題はローンのデフォルトをどうするか。(例えば30年払い続けると、帳消しとなる)
・日本で検討されている所得連動型奨学金制度は、本人の年収が300万以下だと申請によって返済猶予が可能。年収が0でも、少しは払う制度を検討している。
・学生は現行の奨学金制度と所得連動型と返還方法を選択することが必要。



西井先生『少子化時代における私立大学の財政の在り方について』
少子化時代の財政環境
・私立大学は大学数は増えても、学生数はあまり変わらない。
・志願倍率は近年は横ばいだが、入学定員充足率は105%ぐらい。
・ST比は、1教員あたりの学生数は90年代は27〜28人が、現在は21人程度。
・最近の帰属収支差額比率(利益)は5%台。
・近年、定員割れしている大学は約40%。
・学生規模による収支状況は、中小は厳しい、大規模も悪化している傾向にある。
 (例えば、帰属収支差額比率は小規模はマイナスが多い、中規模は5%前後、大規模は10%前後など)
・学部の系統別の比較(単科大学の比較)は、薬学部は帰属収支差額比率が高い。また体育系も同様。一方、文系や社会科学系はマイナスとなっている。
・収支とST比は影響する。ST比が30人を超えると帰属収支はプラスになる。
・定員充足ができていれば、無条件に収支は良好ということではない(数値は平成18年)

財務資料の分析構造と新会計基準による分析視点
事業活動収支計算書の分析の視点として①基礎的な教育活動収支に余裕があるか、②経常的な収支は安定しているか、③全体的な事業活動収支は均衡しているかを見る必要がある。


  所得連動型奨学金はもうすぐ大学にも適用され、学生が適切に選べるように説明を行うなど対応の必要があります。大学によっては半分以上が奨学金を受けている場合もあります。また奨学金政策と授業料について合わせて考えるべきと小林先生はおっしゃっておりましたが、奨学金が大学の現場、授業料は法人の管轄という私学もあるでしょう。このあたりは、大学と法人がどのように調整するかが重要になりそうです。