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SD義務化に関する、SDの定義とイメージ転換の必要性

(既に意見募集は終わっておりますが)先日、「大学設置基準等の一部を改正する省令案に関するパブリックコメント(意見公募手続)の実施について」が掲載されておりました。

www.e-gov.go.jp

内容としてはSDの義務化が焦点です。

①SDの義務化
・ 大学は,当該大学の教育研究活動等の適切かつ効果的な運営を図るため,その職員に対し必要な知識及び技能を習得させ,並びにその能力及び資質を向上させるための研修の機会を設けることその他必要な取組を行うものとする。
※1 「職員」には,事務職員だけでなく,教員や技術職員を含む。
※2 第25条の3に規定するファカルティ・ディベロップメントを除く。

また高大接続システム会議の最終報告書(以下、「報告書」)にも、上記のパブリックコメントと同様の内容が記載されています。(報告書P39)

高大接続システム改革会議「最終報告」の公表について:文部科学省

教育活動の充実をはじめとする大学運営の高度化に向け、各大学にお いて、授業の内容及び方法の改善を図るための組織的な研修及び研究(ファカルテ ィ・ディベロップメント)に取り組むとともに、職員(事務職員だけでなく、教員 や技術職員を含む。)を対象とした大学運営業務に関する研修(スタッフ・ディベ ロップメント)の機会を充実する。

 ここを読むと引っかかるのが、設置基準及び報告書ともスタッフ・ディベロップメント(以下、「SD」)の対象を①「事務職員だけではなく、教員や技術職員を含む」としている事と、報告書には②「大学運営業務に関する研修」と記載されている事です。

 

そこでまずは平成20年の学士課程答申では、SDについてどのように定義されているか見てみましょう。

http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2013/05/13/1212958_001.pdf

本文P9

教員と職員との協働関係を一層強化するため、職員の職能開発(スタッフ・ディベロップメント(SD))を推進して専門性の向上を図り、教育・経営など様々な面で、その積極的な参画を図っていくべきである。

用語集

事務職員や技術職員など職員を対象とした,管理運営や教育・研究支援までを含めた資質向上のための組織的な取組を指す。「スタッフ」に教員を含み,FDを包含する意味としてSDを用いる場合(イギリスの例)もあるが,ここでは,FDと区別し,職員の職能開発の活動に限定してSDの語を用いている。

 平成20年時点では、SDの対象は職員(事務職員及び技術職員など)であり、資質向上のための組織的な取組みを指していました。この時点のイメージだとSDの義務化は、教員にFDの義務化があるように、職員も管理運営や教育研究支援を行うための資質向上の目的として、SDを組織的にやらなければならないというものです。しかし今回の設置基準や報告書から読み取るには、そのイメージを変えねばならないようです。

そしてこの設置基準や報告書を踏まえ、考えねばならない事は次の点ではないでしょうか。

  • ①大学管理運営業務とは何か?
  • ②教員にもSDに取組んでもらう場合、FDとの兼ね合い、研修過多、階層(学部長や学科長と役職がない教員が同じ内容でいいのか)
  • ③今までSDに取組んでいない場合は、職員に対して組織的にどのように行うか

 

まずは大学の運営業務とは何かについてですが、これといった定義は中々見当たりません。そこで関連性のあるものとして各大学が定めている大学の管理運営方針についていくつか紹介します。

管理運営方針|法政大学

管理運営の方針/北里大学

他にも、「大学 管理運営方針」で検索するといくつか参照することができます。これらを見ていただくと、教学マネジメントやガバナンス、経営(法人)と教育(大学)、財務などの内容が記載されている事が多いです。(今後、この大学運営が何を指すかは、まだ公開されていない直近の高大接続システム会議の議事録も調べる必要があります)

 

各大学はSDが義務化になる平成29年に合わせて、平成28年度では次の点に気をつけ検討する必要があると考えます。

  • ①今までのSD=職員を対象とした研修ではなく、教員も対象としてプログラムを検討する。
  • ②学内でFDとSDを定義を行い、周知・理解を促すこと。(もしかすると、今回のSDで想定される内容が、今まではFDプログラムに取り入れられている可能性もある。)
  • ③職員の研修ばかり充実しても、SDをやったという事にならない可能性がある(特に補助金申請関連で、大学運営業務に関する研修(SD)を全教職員にやったかと問われる可能性がある。)

特に重要なのは②でしょうか。SD=大学職員を対象とした研修というイメージが非常に強いですから、突然教員に対してSDプログラムに参加を勧奨してもうまくいかないかと思います。

 

最後に、SD論はどうなるか迷走するかもしれませんが、大学職員の資質向上・人材養成という観点も忘れてはならないと思います。また専門職の議論もありますので、これから数年間はもしかするとSD論は大きな転換期になるのかもしれません。