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平成28年度私立大学等改革総合支援事業タイプ1から見る、これから私学が取組む事項

 5月末から「平成28年度私立大学等経常費補助金説明会」が開催されます。このブログでは私立大学等改革総合支援事業について、取り上げていますが、平成28年度の私立大学等改革総合支援事業タイプ①について備忘録として何をしなければいけないかをまとめてみました。

(なお、本記事は説明会の資料を基にしているので、説明会での口頭での説明、後日文部科学省のHPに記載される私立大学等改革総合支援事業の更新を待って、修正する場合があります)

 また当然ですが、高大背素族システム改革会議「最終報告」と3つのポリシーのガイドラインの内容が盛り込まれています。特に高大接続が重点的に新規設問が追加されています。

 

さて、それでは主な変更点と取組む事のメモです。 

①今年度は基準時点が変更

 今までは前年度+本年度の8月まででしたが、平成28年度は平成27年度9月1日から平成28年度8月31日までとなりますので、例えば調査関係、会議の議事録、研修の取組み等、前年度前期にやったから得点をつけられる訳はありません。

 (まあ本来は毎年やっている事を前提としているものが、4~8月中に実施しておけば、2年間申請の根拠として使用できるのは問題があったとは言えます)

 

②【設問①】3つのポリシーの点検・評価の学外の参画が必要

 詳細な私立大学等改革総合支援事業の統合版を見ないと判断がつきませんが、まずは3つのポリシーの点検を大学の点検・評価(内部質保証)のどこでやるのか、またどのレベルでやるのか、例えば大学(学部)自己点検評価委員会か学部学科か、そこに学外を参画させる規程になっているのか、それとも点検・評価の一環として外部評価委員を置くのかも検討する必要があるかといった事が考えられます。

 例えば対応としてこんな所でしょうか

 ⅰ)自己点検評価委員会に学外の方の参画ができるように規定を見直す

 ⅱ)規程の解釈(例えば学長の認めたものを自己点検・評価委員とすると記載があれば学外を参画させ、名簿に名前をいれ、議事録にも出席者と明記する)

 ⅲ)外部評価委員会を立ち上げる

 ※個人的にはⅱはグレーゾーンな気がします。

これに関係するのは、高大接続システム改革会議「最終報告」がありますね。

高大接続システム改革会議「最終報告」の公表について:文部科学省

・ ステークホルダー(高等学校関係者、企業関係者、自治体関係者、学生等)の
視点を取り入れた評価の実施及び社会への評価の積極的な発信

また例えば外部評価委員会を置く場合は、次のような事例もあります。

自己点検・評価 | 情報公表 | 福岡大学

外部評価委員会 | 明治学院大学

学外の参画も地域社会や産業界等とされていますので、他大学の偉い先生だけを招けばいいという事ではなく、例えば学部と関連のある業界の企業の方を招いたりする必要もありそうです。

 

③【設問④】SDの取組み

 平成27年度までは教育の質的転換に関するSDの実施が求められていました。例えば質的転換の共通理解や他大学の取組事例の紹介などを行い、一部の職員を対象として実施したものでもOKでしたのでハードルは低めでした。しかし今年は、SDの実施方針・計画を全学的に策定し、①3つのポリシー・自己点検・内部質保障、②教学マネジメントに関わる専門的職員の育成、③大学改革、④学生の厚生補導、⑤業務領域の知見の獲得を目的とするもの、以上5つの内、いくつ取組んだかで得点が変わります。

 今の段階だと、研修会を開催する必要があるのか、それとも②の場合は大学院や履修証明プログラムの参加とかでOKになるのかはこれからの状況を見たいと思いますが少なくともSDの実施方針・計画は早急に策定しなければなりませんね。SDをスポット的に研修を行うのは(全員参加を求められていない限り)難しくはないのですが、実施方針や計画はきちんと出来ている大学は少ないのではないでしょうか。

 ②の教学マネジメントに関わる専門的職員の育成とはどうするのでしょう?学内でどう育成するとかの方針策定も難しいですし、例えば企画課に交代で異動するとか出向とか大学院に行かせるとかでしょうか。自分は②には当てはまっている気がしますが、組織としての方針や根拠書類が難しいなと思います。

 

④【設問⑤】シラバスに記載すべき内容の見直し

 今年度は、具体化されて①準備学習の具体的な内容及び必要な時間、②授業における学修の到達目標及び成績評価の方法・基準、③卒業認定・学位授与方針と当該授業科目の関連、④課題に対するフォードバックを求めていることが必要です。

 対象となる期間のシラバスは既に作成されていますので、現在あるものを見るわけですが、これを全て満たすシラバスは金沢工業大学の他に、数大学しかないだろうと思います。特に準備学修に必要な時間を載せている大学はあまり見かけません。この5つを出来ていると回答としている大学があり、自分が私学事業団の人だったら真っ先にヒアリング(もしくは検査)に行きます。

 また平成27年度同質問項目は次の通りです。

H27私立大学等改革総合支援事業調査票

私立大学等改革総合支援事業:文部科学省

⑥ シラバスの作成要領等により、準備学習(予習・復習等)に必要な時間又はそれに準じる程度の具体的な学修内容をシラバスに明記することを全教員に求めていますか。

 昨年度から比べると非常に厳しくなっていますね。この全てを満たすシラバスを作成するには、カリキュラムマップや単位制度の理解と共有なども出来ていないと満たすことが難しいと思います。

 

⑤【設問⑧~⑩】設問によっては研究科も含めている

 昨年度までは「学部」しか記載がなく、研究科を含めなくていいという理解ができた質問項目がありました。今年は授業評価の結果や教員の教育面の評価制度なども研究科は評価対象になっております。

 昨年まで、設問によっては「全学部において」と記載してあるものは研究科を入れなくてもいいという解釈だったのが、授業評価結果の活用、教育面における評価制度、FDの実施が求められます。研究科でできていなくとも学部でやっていれば部分点はもらえるようです。

 

⑥【設問⑳~】アドミッションポリシーの明示、一般入試での記述式問題の出題、AOや推薦入試での基礎学力の状況の把握、多様な背景を持つ受験者を受け入れるための定員枠があるか

 ポリシーの明示は何とかなりそうですが、他の高大接続関連は、次年度の入試は入試案内を高校に配布したりと既に決まっているものもありそうなので、今から取組むという事は難しいかもしれませんね。

 

 今年度のタイプ1の設問を見ていて感じるのは、設問が発表されて、補助金申請までの期間で付け焼刃として取組む事は年々難しくなっている事です。高等教育政策に目を光らせ、報告やガイドラインを理解し、学内に共有・理解してもらい、大学一丸となって改革に取組むという事を日常からやっていかないと、特にタイプ1の選定は難しいです。さて、まとめの代わりとして今更ですがこの補助金を申請する上でポイントを2つだけ挙げてみます。

①根拠書類はきちんと整理をする。

 特に議事録があるかどうか、あってもそれが議事録になっているかどうか(単に記録や発言をまとめただけになっていないか)も確認が必要でしょう。(私学事業団や国から監査・検査があったら、根拠書類をきっちり見られるでしょうから、不確実ではないようにする必要があります)

②その設問に対し、出来ているかは複数の目でチェックを行う(解釈の目線あわせ)

 設問について、実際に担当している人と文科省・私学事業団では前提や理解が異なることも考えられます。現場担当者が出来ていると主張しても、文科省・私学事業団の定義に合っていなければなりません。(その為にも①の書類が重要です)

 

 私立大学等改革総合支援事業は何故そんなに取りたいの?と言われる事もあるでしょうが、COCやAP、スーパーグローバルなどの補助金は大学の改革のスタートアップの為の補助金であり、お金の使い道も決まっており(さらには自己負担も必要)です。しかしこの支援事業は、改革の結果についてお金がつき、経常補助や特別補助に上乗せなので、使途が定められていないお金とも言えます。