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平成29年度私立大学収容定員増の傾向

 平成28年6月28日に平成29年度からの私立大学等の収容定員の増加に係る学則変更予定一覧が公表されました。

平成29年度からの私立大学等の収容定員の増加に係る学則変更予定一覧:文部科学省

  日本経済新聞にも次のように取り上げられています。

www.nikkei.com

  入学定員充足率及び定員充足率の抑制に対する各大学の経営策ですが、具体的にどのような定員増加がされているのか。また都市部の大規模校とありますが、本当にそうなのかを検証してみます。

 

 なお、このブログ記事では、文部科学省で公表されている学則変更予定一覧に記載されている44大学を対象とします。また、今回は編入学定員は入れておりません。

 まず全体としてですが、今回の定員増加を申請した大学は44大学となり、合計の増加数は7,354人となります。また従来ある学部学科だけではなく、新たに設置認可を行っている学部学科の純増となる定員数もこの中に含まれています。

 

それでは最初の疑問です。

1.本当に都市圏に定員増が集中しているのか?

 公表されている一覧を基に、各都道府県で何名の定員増があるかを調べてみました。

なお、複数のキャンパスを持つ大学は、定員増をする学部の所在地の県の数値とし、 上級年次からキャンパスが変更となる場合は、1年次のキャンパスの所在地としました。

 例:東京理科大学は北海道長万部に基礎工学部1年のキャンパスがありますので、北海道が定員増があったと換算しました。

下記の図は、次のように色分けをしています。

 0~100人   黄色

 101~500人  緑

 501~1000人  青

 1001人~   赤

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 東京は2500人以上の増加があり、当然1位でしたが、2位の大阪は1100人程でした。3番目に多いのは愛知でして、三大都市圏にはやはり定員増加が集中していることが見受けられます。(ただし首都圏とはいっても、千葉・埼玉・神奈川はそう多くはありません)岡山県が青色なのですが、これは川崎医療福祉大学が330名の定員増がある為です。

 近畿圏の場合は、立命館龍谷・近畿といった大きい大学は様々なキャンパスで定員増をしていますので、滋賀県にもある程度の増加が見受けられました。

 

2.定員増加数だけではなく、増加率はどうなっているのか?

次は各大学がどのくらい収容定員からみて定員をどれぐらいの割合増やしているのかを調べてみました。その結果が下記の図です。

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 縦軸が増加率、横軸が増加数となります。増加率が120%以上が3大学ありますが、いずれも新たに学部を作る大学となります。特に160%は群馬パース大学でして、小規模大学でもありますので、新学部を作る際に120名の増加でこのような割合になっています。

 既存学部の定員増加であれば、ほとんどは115%以内としているケースのようです。おそらく定員増加抑制分で入学できなくなった数を見込んで設定した数であり、必要な校地や校舎、教員数も加味してこの数字を出したのでしょう。

※ちょっと古い記事ですが、収容定員増加の方法と考え方についてまとめています。 

as-daigaku23.hateblo.jp

  また、参考として上の散布図を大学規模別に作ってみました。規模別は私学助成の不交付基準の大学規模を参考に行いました。なお、母数は小規模大学は15大学、中規模大学は15大学、大規模大学は14大学となります。

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 小規模大学では、新学部設置による増加で、増加率が高い例が見受けられますが、大規模大学の場合は増加率はあまり多くないケースもありました。(例えば日本大学は100.74%)なお、横軸で900名以上となっている点は近畿大学です。

 

 今後さらに定員増加の予定一覧が出た際に、今年度分を作成する予定です。また今後の集計・分析(もしくは課題)として、この定員増から見る大学設置基準上での教員数の増減について(教員数を増やす事が必要な定員像を行った大学はどのくらいあるのか)、この定員増を受けて、次年度募集状況(今年度行う入試結果)はどのように変わったのか(今年度はどの大学も比較的募集状況は良いようですが、これがどうなるのか)、学問分野ごとの増加はどうなのか、大学の財政にどのような影響があるのかといった事ができればいいなと思っております。