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IRと大学職員⑩IRと現場のズレの一考察

 IRを行っていく(データを収集し、分析し、報告する)上で、自分も含め、他の方々からの話や聞こえてくる意見には、次の様なものがありました。

①IRが行った分析はまったく的外れである。

②IRの分析は、ずれている(自分が行った分析はどうやらずれがあるようだ)

③改善策がまったく示されていない

それでは、どうしてこのようなズレがあるとされるのでしょうか。今回はこのズレについて考察してみます。

まずIRの過程を下記とします。(IRの流れやステップについては、いくつかあります)この流れでは、Aという事象・課題があり、その解決の為に関連するデータを収集し、分析し、報告するというものです。なお、IRを担う者をIR担当者、Aに関連する人をA関係者(学生、教職員、執行部、部局等々)とします。

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このステップでは、どこにズレが生じてしまう可能性があるのでしょうか。

まず1)Aという課題ですが、次が考えられます。

●Aという問題点が正しく把握されていない。(何かあるぞとボンヤリした感覚からデータを使って可視化していく事はあります)

●A関係者とIR担当者のAに対する認識が異なっている。

●IR担当者もしくはA関係者のどちらかがAに対する知識がない(もしくはIR担当者が、知識や暗黙知についてヒアリング等を行い、理解していない)

3番目は、例えば集計したデータを統計ソフトに取り込んで、分析するだけならなくてもいいのかもしれませんが、解釈する上では必ず必要です。

 

次に2)データ収集です。

●そもそもデータ定義が、A関係者とIR担当者で異なっている。(例えば、GPAは全ての履修科目の成績から算出していると捉えていたIR担当者と、GPA計算除外科目(群)を設定していたA担当者ではデータの捉え方が異なってしいまいます。)

これを解決するには、データ定義やデータが何処にあるかといったデータカタログの取り組みが考えられます。

 

3)データ分析のズレとしては

●その分析手法が、本当にいいのかが判断できない。

●そもそも分析結果についてA関係者が理解できない。

これは、IR担当者何人かに聞いても、集計レベルが基本で必要に応じて統計分析を行うといった人や、データを可視化しやすさに優れているBIツールを使っている人、統計ソフトを使っている人がいますが、原因はデータや統計に対する知識理解の差が表れてしまいます。ここはIR担当者の腕の見せ所で次のステップの報告で如何に分かりやすく見せるかだと思います。

 

4)報告についてはこんな過去記事があります。 

as-daigaku23.hateblo.jp

 ここのチェックが出来ていない場合も、ズレの一因になる場合があります。あとは3)と同じように

●報告に対する分析結果が読み取れない(統計に入ってしまうと、会議の場では質問されてなくとも、「あれはどういう意味か」と後で聞かれる事がありますので、そこも留意すべき点です)

●報告への期待と現実が異なる。例えばA関係者は、データ収集・分析から、何をどのようにやればいいのかを事細やかに書いてあると期待している場合もあれば、今のAという事象をデータによって可視化出来ればよいと考える場合もある。

この2点目については、大学によってIRをデータ収集・分析・報告だけとする場合もあれば、企画まで求める事があります(特に企画室内に配置されているなど)このズレは実は大きいのではと思っていて、A関係者は解決策まで求めているのに、IR担当者としては分析結果から「●●という事が言える」だけであれば、かなりズレが出てしまいます。)

5)A´は、Aが変わる為への時間や労力のズレがあるのではないでしょうか。

●分析・報告を行えばすぐに改善が出来るとA関係者は捉えている。(IRの分析結果が出ればすぐに改善ができると、データの分析結果を魔法の杖や劇的に効く薬のように捉えられている。またIR担当者が全てを示し、指示してくれるかもしれないという期待とIR担当者のそこまではできないというギャップ)

 

いくつか思い浮かぶものをステップ毎に1~2つのギャップの要因を挙げてみました。大規模大学ならともかく、小中大学だと解決策としてA関係者とIR担当者とのコミュニケーションかと思っています。お互いに指摘できる関係づくりが、データを情報に変換し、大学の教育研究を進めるインテリジェンスにしていく事が進むのではないでしょうか。