大学アドミニストレーターを目指す大学職員のブログ

高等教育関連の話題が中心。最近は補助金やIR、SDの話題が中心です。

IRと大学職員㉑IRと内部質保証

 最近、内部質保証に関するセミナー等が多くなったと思うのは気のせいでしょうか?これも機関別評価が第3期を迎え、第2期では「内部質保証システムがあったか?」だったのが、第3期では「(既に内部質保証システムがある事を前提として)内部質保証システムが有効に機能しているか」といった観点に移った事もあるのでしょう。

 (内部質保証と言われておりますが、2008年12月に出された中央教育審議会(以下、「中教審」という)の「学士課程の構築に向けて」、所謂「学士課程答申」に掲載されている内容と今の求められているものとはそう変わりはありません。

◆ 自己点検・評価のための自主的な評価基準や評価項目を適切に定めて運用する等,内部質保証体制を構築する。 これを担保するため,認証評価に当たって,評価機関は,対象大学に対し,自己点検・評価の基準等の策定を求め,恒常的な内部質保証体制が構築されているか否かのチェックに努める。自己点検・評価の周期については,不断の点検・見直しに対して有効に機能するよう適切に設定する。さらに,新しい学位プログラムを創設しようとする場合,学内に審査機関を設け,外部有識者の参画を得つつ,自主的・自律的に審査を行い,学位の質を確保するように努める。

◆ 第三者評価制度など評価システムの定着・確立に向け,必要な環境整備を進める。

 例えば,大学団体等との連携を図りながら,次のような取組を進める。

・評価機関間の連携した取組(評価員の研修方法の開発,効果的な評価方法や評価指標の研 究開発,組織的な連絡協議の場の充実など)の支援

・学習成果を重視した大学評価の在り方の調査研究,多様な学習アセスメントの研究開発の促進

・最低限の説明責任を果たしていない大学(例えば,自己点検・評価や第三者評価等に関する法令上の義務の不履行など)や内部質保証体制が備わっていない大学に対する財政面等における厳格な対応,法令違反状態に対する是正措置の発動

  例えば、外部有識者の参画などは、私立大学等改革総合支援事業の設問に入ってきていたりと、政策誘導によって為されている点もあります。)

 

 さて、内部質保証に関する話題の時に、PDCAサイクルとIRの話が出てきます。ただその中でたまに「IRによってPDCAサイクルをまわせば、内部質保証はOK!」という趣旨があり、これに対しては違和感を感じています。

 この違和感は2つの点が言えるかと思います。1つ目はIRによってPDCAサイクルをまわせばいいのか?、2つ目はPDCAサイクルをまわせば内部質保証と言えるのか?です。

 

 まず1つ目ですが、IR(つまりデータを適切に情報へと変換し報告する事)、定量的データのみでPDCAサイクルをまわすことへの違和感です。確かに、定量的な達成目標があり、達成目標から鑑みて、どれぐらいの数字が出たかを点検評価する事はあります。しかし全てが定量的なもので自己点検評価できるのでしょうか?また結果のみを点検評価するのでしょうか?点検評価する中で定性的なもので行う事も考えられます。例えば学生支援に関して、学生調査のみならず、学生へのインタビューを行う事もあるでしょう。また点検評価はプロセスを評価する事も必要となる場合もあります。IRでPDCAサイクルをまわすではなく、PDCAサイクルのために適切にデータや情報を活用すると考えておく必要があります。

 

 次に2つ目のPDCAサイクルと内部質保証についてです。まずが、2つの評価団体の内部質保証に関する説明を確認してみましょう。公益財団法人大学基準協会(以下、「大学基準協会」という)「大学評価ハンドブック」(2017(平成29)年4月)によると内部質保証を次のように説明しています。

PDCAサイクル等を適切に機能させることによって、質の向上を図り、教育、学習等が適切な水準にあることを大学自らの責任で説明し証明していく恒常的・継続的プロセス」

 また大学改革支援・学位授与機構及び質保証システムの現状と将来像に関する研究会は、「教育の内部質保証に関するガイドライン」(2017年(平成29)年3月)で

大学が自立的な組織として、その使命や目的を実現するために、自らが行う教育及び研究、組織及び運営、並びに施設及び設備の状況について継続的に点検・評価し、質の保証を行うとともに、絶えず改善・向上に取り組むことを指す。

」と定義しています。

 特に大学改革支援・学位授与機構のほうを見ていただくと分かりやすいのですが、点検評価を行うものは大学全体で1つではなく、様々な分野・領域があり、組織レベルでも異なります(例 大学→学部→学科→教員個人)。それぞれが自己点検評価を行う必要があるのは、内部質保証の観点から言うまでもないのですが、それらを統合したり、有機的に連携や連結する事が内部質保証のシステムを構築し、内部質保証が機能していると言えます。つまり、「内部質保証のために自己点検評価をやりましょう!」だけではなく、「それらを組織的にどのように連携・連結させるか?」まで考え、実行しなければなりません。自己点検評価の為に、ツールを導入しただけでは内部質保証が出来ているとは言いにくいのではないでしょうか。

 

 このような記事を書いたのは、若干IRに関わる立場から、最近はIRとつけるのではなく、第3期機関別評価もしくは認証評価とか、自己点検評価とかといった観点からの(企業からの)アプローチが多くなってきていると感じている為です。

(例えば、弊社の調査ツールを使えば、データによるPDCAサイクルで内部質保証ですよというような…。)

 

まとめ

・IRがあるから自己点検評価が出来るのではなく、自己点検評価の中でIRをどのように使うかである。

・IRが内部質保証を行うのではなく、内部質保証のシステムを機能させるために、自己点検評価をしっかりやっていく事が必要である。

・IR部署やIR担当者が内部質保証や自己点検評価を担っているのではない。しかし、それらを支えるためには重要な位置づけではある。

 

そのうち、IRと内部質保証(特に第三期機関別評価)については、別の場所できちんとまとめたいと思います。