大学アドミニストレーターを目指す大学職員のブログ

大学や高等教育関連、法令の解説が中心のブログ

【スポンサーリンク】

内部質保証は何故分かりにくいのか?

平成30年度から第3期認証評価が始まります(※評価機関による)。端的に言うと、第1期は自己点検評価をしているか、第2期は内部質保証(システム)が構築されているか、第3期は内部質保証(システム)がきちんと運用されているかが問われています。

第1期と第2期は、その場しのぎで慌てて自己点検評価を行い、書類の体裁を整えてと、まあ書面上で頑張ると何とかなったのかもしれないのです。しかし、第3期ともなるとそうもいきません。そうすると、認証評価を受審する時からではなく、恒常的に大学として、内部質保証(システム)を構築するかが問われてくる事になります。

<参考>内部質保証に関しては下記も参照下さい。

www.daigaku23.com

さて先日、独立行政法人大学改革支援・学位授与機構の「内部質保証ワークショップ」に参加してきました。 

www.niad.ac.jp

当日の内容は、各大学のセンシティブな内容でしたので触れません。しかしそこで感じたのは設置形態や大学規模、参加者の立場によって内部質保証の見方というのが多様性があるなと感じます。一方、そういう場では議論は出来ても、学内で理解してもらうには大変という声もある訳です。

 そこで出た議論や今までに内部質保証に関わる中で、何故内部質保証は分かりにくいのだろうと自分なりに掘り下げてみたいと思います。

<関連記事>

www.daigaku23.com

内部質保証と自己点検評価の違いが分かりにくい。

文部科学省中央教育審議会の大学分科会の「認証評価制度の充実に向けて」(審議まとめ)(平成28年3月18日 大学分科会)では内部質保証を次のように記載しています。

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/houkoku/__icsFiles/afieldfile/2016/03/25/1368868_01.pdf

定期的な自己点検・評価の取組を踏まえた各大学における自主的・自律的な質保証への取組(内部質保証)

自己点検評価は、設置形態によらず、殆どの大学で毎年あるいは定期・不定期に行われている事かと思います。すると「私達は、きちんと自己点検評価を行っているから、内部質保証は出来ている」と言うのは当然かもしれません。自己点検評価=内部質保証と思うわけです。しかし、内部質保証は1つの自己点検評価サイクルそのものではない事が殆どです。個人の考えですが、内部質保証は方針(ポリシー)や指標など質向上に向けたいくつもの自己点検評価サイクルが(1年や数年という単位で)構造化・連携・重複・相互作用によって行われたものであるというものです。

 

内部質保証の事例問題

大学が何かを進めるには、事例があるという事が早かったりします。「○○大学では、こんな事をやっていますから、本学でも着手しましょう」とか、ある意味外圧にもなる訳です。

しかし、内部質保証の事例というとどのようなものが思い浮かぶでしょうか?気になってASAGAO kyoto-u メーリングリストのアーカイブで内部質保証で検索をし、どのようなセミナーや勉強会が出てくるかをみると、第3期大学評価、内部質保証構築、IRやIE、データ活用などのワードを見ることができます。そうすると何も知らない場合は、事例だけ見ても、そのセミナーや勉強会だけでは内部質保証全体を把握するのはかなり大変な事になるのではないかと思います。

ASAGAO kyoto-u メーリングリスト

※内部質保証を理解する参考として下記の論文をはじめ、IEについて知っておくといいと思います。

http://iir.ibaraki.ac.jp/jcache/lib/docu/003_h2710/003-h2710-31_fujiwara.pdf

 また事例を知るという事はどういう事でしょうか?真似をする事でしょうか?それとも、それを基に状況に合わせ再構築する事でしょうか?内部質保証を大学として進めるという事は、設置形態、大学の規模、単一キャンパスか複数キャンパス、受審予定の評価機関、学問分野、教学マネジメントやガバナンス、トップダウンかボトムアップか、大学の背景や文脈、学部や研究科等の自治など、様々な背景やファクターによって適切な内部質保証がおそらく異なります。事例を知ることは、無意味ではありませんが、自学のマクロからミクロまで、さらには明文化されているものから明文化されていないものまである程度分からないと、事例を活かす事が難しいと感じています。

 

内部質保証をどこから見るか

内部質保証の話になると、内部質保証を構成する「点」なのか、「点検評価サイクル」なのか、それとも「ライン」なのか、「システム」なのかを踏まえておかないと、イメージが異なってしまうのではと感じています。

またどの組織構造の中から見ているのか、それとも俯瞰してみているか(むしろ見ているかでなく、見ることができるかが正しいように思います)によって、その人が持つ内部質保証のイメージも変わってしまうことではないかと思います。

 

内部質保証は、教学なのか評価なのか、総合的・複合的なものなのか

内部質保証は分かりにくい。教学なのか、評価なのかなど、はっきりさせて欲しいという声もあるでしょう。しかし、既に述べているように組織によって、考えや捉え方は異なります。内部質保証とは何をすればいいかを具体的に示して欲しいという気持ちも分からなくはないのですけど、教学とか評価と一つの枠に収めるのは、私自身は違うのではと思います。(なお、私の所属する機関はマネジメントやガバナンスに沿った設計をしています)

 

おわりに

内部質保証の議論をする時、個人の感覚だと大学規模と大学自身の歴史、そして持つ学問分野によって、捉え方が違うような気がしています。(あくまで印象です) おそらくH30に行う第3期認証評価が終わると、各大学の状況も分かり、理解しやすくなる情報が少しづつ増えていくのではないでしょうか。 

(そもそも内部質保証を進めるには、システムだけでは不十分で、人材育成が不可欠だと思うのですよね)